Freelance life

フリーランス翻訳家: 『餅は餅屋』

ちょっと前に、あるジュエリーデザイナーの写真集の一部を翻訳しました。私の専門の法務分野とは全く異なるマテリアルです。

基本的に分野外のもの(例えば、出版物や、宣伝広告、雑誌。ホームページ等)は引き受けないことにしているのですが、今回はジュエリー関係ということで、私のフリーランスライフ(ハンドメイド活動)からしてかなり興味があったので担当させていただきました。

なぜ普段は分野外の翻訳を引き受けないかというと、いつもよりも何倍も時間がかかってしまうからです。

では、なぜそんなに時間がかかってしまうのでしょうか? 今回の経験を例にお話ししたいと思います。

法務翻訳は一字一句逃さず訳したり、同じ用語は同じ訳をするといったことが基本にあります。それに対して、今回お引き受けしたものは写真集で、全体の雰囲気をマッチさせるために詩的に書いて欲しいというご依頼がありました。そして、詩を詩的に翻訳するのではなく、学者のコメントを詩的に書くという難題となりました。法務翻訳とは真逆な翻訳方法になります。

いつもは一字一句逃さず翻訳している人間にとって、似た用語をまとめて一つの語にしたり、著しい意訳をするのは、さもすれば誤訳ともとられるので、かなりの抵抗があります。その姿勢を振り切るだけでも至難の業です。

もちろん、同じ単語でも普段使い慣れた訳語とは異なることがほとんどなため、訳語の選択にも注意が必要です。

そして、最終的に仕上げる日本語のブラッシュアップにはかなりの時間をかけました。デザイナーや出版社とのやり取りの中で修正を加えるといった作業もあったので、法務分野の翻訳者では想定されない時間もあります。

ということで、法務翻訳なら1時間で終わる長さのマテリアルであったにもかかわらず、今回は合計すると何時間かかったか分かりません。

いずれにしても、今回は、好きでお引き受けした仕事でもあり、興味のある内容なので、実際に担当して良かったと思っていますが、収入的に考えても、営業上も、別分野の仕事をするのはお勧めしません。普段と違う分野だと時間もかかって割に合わない上、一歩間違えれば下手な訳を提出して翻訳者としての名前に傷が付くからです。

大げさですが、翻訳分野の違いは、病院の診療科が違うようなものです(もちろん人の命にかかわるわけではありませんが。。。)。日本語には、『餅は餅屋』という言葉があるとおり、専門分野を決めて活動するのが一番良いと思います。

ですから、面接や翻訳者の集まりで「何でもできます」とか「何でもやります」と答えるような翻訳家は逆に信頼されない可能性もあります。

 

ちなみに、法務翻訳のことや、その他フリーランス翻訳の記事は、過去のブログを参照してください。

 

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