Freelance life

法務翻訳って?(1) 何を訳すの?

前回、フリーランス翻訳家の1日について記載した。その際に私の専門が法務翻訳であることに触れたので、それについて経験に基づく範囲でお話したい。

長いので以下のように4回に分けて説明していく予定だ。

(1) 何を訳すの?
(2) どこから仕事をもらうの?
(3) どうすれば法務翻訳者になれるの?
(4) その他

今回は、(1) 何を訳すの? についてお話する。

厳密な定義はないとは思うが、法務翻訳というと、主に、法律事務所や企業の法務部門等で取り扱う文書が対象となる。

具体的には、契約書訴訟関連の文書が多く、ときには弁護士がクライアント向けに行うプレゼンの資料を訳すこともある。

契約書にはいろいろな種類があるものの、どの種類でも契約書で使用される一定の形式、表現といったものがある。普段の日本語では見たことのない表現もたくさんあり、私のように弁護士資格のない人間が学ぶことはたくさんある。その反面、いったん慣れてしまえば、スラスラと訳すことができるので、他の翻訳分野と比べて、1日の処理量が多いという利点がある。

普通の日本語では主語がいちいち入っているとおかしく聞こえるが、契約書の場合、主語や「及び」「又は」といった接続語も含め、一字一句抜けがないよう正確に訳さなければならない。

数百ページにわたる契約書などもあるが、その場合、何人かの翻訳者で分担することが多い。


さて、次の訴訟関連文書は、訴状準備書面といった訴訟のために作成された文書が中心になるものの、正直いって何でもありという感じもある。証拠書類に使われる資料には様々なものがあるからだ。

例えば、社内規則や日報、エクセルデータなどもあれば、注文書や振込明細書、過去のメールなどもあったりもする。要は、どの様な訴訟かによって色々なものが証拠として使われ、それを訳すことになるのだ。

また、アメリカの特許訴訟の場合、証言録取(デポジション)というものがある。現場では通訳がつくことが多いのかもしれないが、書面に書き下ろした証言録取を翻訳することもある。つまり、口頭で話された内容を訳すことになるのだ。

他の翻訳家のブログを見ると、英会話ができなくても翻訳家になれるようなことを書いている人もいるが、英会話ができないと、この証言録取の翻訳は難しいと思う。世の中には辞書に載っていないスラングや口語表現がたくさんある。英会話ができずに辞書だけに頼っていると多分とんでもない訳になり(実際に、以前勤めていた会社でのチェック作業中に、とんでもない訳をしている外部翻訳者の訳を見たことがある)、翻訳家として信頼を失うことにもなりかねない。

プレゼン資料はパワーポイントファイルのまま提出することがほとんどだ。ワードファイルのようにひたすら入力し続けることができない上、箇条書きとなると普通の文章と違って前後関係から判断しずらいことが多いことから、比較的時間がかかる。

 

簡単ではあるが、これらが法務翻訳者が対応することの多い文書の例である。

こんな感じで、法務翻訳には映画やテレビの翻訳のような華やかさはない。その反面、継続的に受注のある可能性は高い分野かもしれない。訴訟の初期段階で翻訳して気に入られれば、その訴訟が終わるまで継続的に依頼を受けることが多いし、一旦翻訳した契約書の内容が更新されたときにも再度依頼されることが多いからだ。

次回は(2) どこから仕事をもらうの?についてお話しする予定。

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